『三国志を歩く、中国を知る』を読んだ。

  正確には、「読んだ」ではなく、「読んでいる」段階である。この本、著者は坂本信博という人、出版したのは西日本新聞社である。(発行、2024年11月)西日本新聞は福岡の地方紙で、筆者はその記者である。わたしの持っているのは今年6月の第二刷となっているから、めでたく初刷りを完売して、増刷がかかったということになる。慶賀の至りである。

 初刷り完売からもわかるとおり、この本、なかなか中身の充実した面白い本である。

 三国志の登場人物、劉備、曹操、関羽にはじまり、さまざまな人物が取り上げられる。名場面の舞台も数多く登場する。各地で、登場人物がどのように扱われているかも、施設の紹介だけでなく、地域の人々の感情もよう調べられている。

 こうした記述は、単なる三国志にかかわる知識を増やすだけのものではない。その紹介が、現代の中国の社会の状況、問題の解説にもなっている。このへんの匙加減が大変に上手である。それは、筆者の器用さの産物ではなく、一つには、三国志を長年、愛読してきた蓄積の賜物である。もう一つは、記者としてのしっかりした取材力の聖歌でもある。

 最近のマスコミの中国報道には、中国の中央、地方の政府が発表した文章や、あちこちの新聞の記事を読んで、それを貼り合わせた、いわゆるコタツ記事が多い。そんな文章ばかり読まされているから、この本の文章が、大変に栄養価の高いものに感じられる。

 じつのところ、わたしは三国志が得意ではない。なんども挫折している。そんなわたしでも、この本は興味深く読めるのである。

 そうそう、この本、364ページもあるのだが、なんと1700円なのである。驚くべき低価格である。はじめ、図書館で借りて読み出したのだが、内容と値段にひかれて、自分で購入してしまった。それくらい、良い本なのである。


2025年8月10日


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