唐様の文字

 川柳に、「売り家と唐様(からよう)で書く三代目」という句がある。わたしは、以前この句のことを以下のように理解していた。商人の家も 三代続くと、主人が商売よりも、趣味に走る傾向がある。その結果、本業がおろそかになる。ついにへ、家を売るような羽目になってしまう。さて、この三代目が。 書いた文字が 唐様だというのである。わたしは、この唐様の文字をなんとなく、趣味に溺れがちの人にふさわしい気取った字体を思い浮かべていた。具体的にいえば、線の細い、なよっとした印象の文字を思い描いていた。

 だが。最近になって、ここでいう唐様が、江戸時代後期に流行した書風であることを知った。女性的な和様に対して、中国風の文字を書くことが流行ったのである。江戸時代に中国から伝わった黄檗宗、徂徠学派の中国崇拝などの影響だといわれている。

 この字体、当然、骨格のしっかりした力強い書風である。和様に対立するのだから当然である。となると、先の川柳、威風堂々たる立派な文字で書かれているのに、その内容が「売り家」の通知なのである。文字と内容のギャップに、気の毒さと、おかしみを感じることができる。なるほど、こう理解してこそ、この句の魅力もわかるというものである。

 何事も、いい加減な知識で、わかった気になってはいけないのである。


2026/02/22


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