ドラマ『零日攻撃』の主題歌
台湾の歌手といえば、長い間、江恵が頂点に立っていた。都はるみと八代亜紀と石川さゆりを足したような地位の歌手である。その彼女が数年前、引退を発表した。原因はいろろ取り沙汰されているが、体調の低下も一因らしい。ただし、その後も、たまには人前で歌っている。だが、従来のような活動は止めてしまった。基本的な引退なのだろう。
女王が空位になった。そこで、後継者は誰なのかが、一時話題になった。わたしの印象では、その地位についたのは、曹雅雯(Olivia Tsao)という歌手である。ただし、わたしは、この人のファンなので、客観的な評価とはいえないが。歌手のタイプからいうと、この人は、江恵とはかなり対称的である。江恵は、典型的な芸能人という華やかな雰囲気の人であるが、この人はちょっと違う。
この人、すごい美人というわけではないが、そこそこの美人だと思う。世が高く、頭が小さく、姿勢がいいので、立ち姿がきれいである。どことなく、知的で、落ち着いた雰囲気である。中学校の音楽の先生で、女子生徒の憧れの存在、といった人である。
この人は台湾語の歌手である。この人のオリジナルのヒット曲もたくさんある。この人が他の人のヒット曲をカバーした作品、例えば、「雨水我問儞」(雨よ、教えて)、「人生的歌」(人生の歌)などは、YouTubeで楽しむことができる。これが大変によい。
先日、この人の歌を、台湾の音楽に強い音楽配信、KKBOSXで探していたら、今年の作品として「風聲人影」という曲が揚げられている。連続ドラマ『零日攻撃』の主題歌と説明がついている。『零日攻撃』という作品は、聞いたこうとがある。たしか、これは中国が台湾へ侵攻を始める直前の台湾を描いたドラマだったと気づいた。新聞やネットで話題になっているのを見た。この人が主題歌を歌っているのか、
『零日攻撃』は日本でも、途中まで見ることができる。amazonプライム・ビデオで配信されている。早速、公開されている分、四話まで見た。(その後、五話も公開された。)これは、一つのドラマといっても、毎回、登場人物や立場が変わり、中国の侵攻を目前にして、台湾の社会のそれぞれの部分でどのような事件がおきるか、を描いている。見てわかったが、とにかく暗い。カタルシスもない。たいがいの終わりは悲劇的である。その背景には、中国侵攻が、台湾にとってきわめて深刻な問題であるという事実が存在している。
ドラマムの台詞は中国語(台湾華語、國語)であるが、主題歌は台湾語である。そこに、このドラマの制作者が、台湾の独立にかける思いが表れている。恋愛の歌がほとんどである台湾語の歌謡曲だが、台湾語であることがそれ自体、すでに強い政治的なメッセージになっているのである。
2025/09/14
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