台湾国民党主席の熊本支援

  台湾の国民党は、そのトップを首席と呼ぶようだ。現在の首席は、総裁の鄭麗文さんという人である。彼女(女性である)が、熊本の震災に対して、100万新台湾ドル(訳450万円)の個人寄付を行ったらしい。中国政府は、これに対して、中国の災害への対応と比べて、アンバランス、つまり日本に過剰に手厚いと文句を付けているらしい。鄭麗文さんは、政治的には日本に批判的な態度を表明しているが、個人的にはけっこう日本好きだという推測もある。そうだとすれば、アジアの政治家に、めずらしくない態度の一つである。政治的には、立場上、反日を主張していても、本音は日本好きという人はけっこう多い。

 これは、今回の寄付とは関係ないが、鄭麗文さんいえば、とにかく身長に目が行く。178cmあり、台湾の女性としては、かなり大柄である。あの習近平さんと並んでも、引けを取らない。


 台湾の政治は、長い間、国民党が一党による独裁支配をおこなっていた。蒋介石が中心であった国民党は、中国で共産党との内戦に敗れ、第二次大戦後、大陸から台湾へ侵入してきた。国民党は台湾で、外来勢力として、在地の人々へを弾圧し、強圧的な支配をおこなった。当然、強烈な反共であり、大陸の中国政府と対立した。ところが、現在の国民党は、親中国である。国民党は、2000年代の前半、民進党に敗北して野党に転落した。この時、体制を立てた直すため、時代遅れの反中国の看板を下ろし、親中国に方向転換したのである。これは、国民党に変わって政権政党となった民進党の台湾独立的な傾向に対抗するためであった。国民党にとって、一つの中国は、国民党が大陸をも支配する政権であったはずなのだが、大陸の政府を認めて、中国は一つであるという、逆転をやってのけた。

 これに対し、民進党は、政権政党としては、あかららまに台湾独立とはいわないが、そもそも台湾独立的な傾向をもっている。国民党は、これに対抗するために、中国大陸との交流を強くし、その経済的な利益によって民衆の支持を得ようとしたのである。あまりにもあからさまな利益重視ではないだろうか。

 こうした国民党の将来は、あまり明るくないのではないかと思う。元来、国民党の中心は、中国から台湾に移住してきた人々である。さらに、その子供世代も、国民党の恩恵をこうむっており、国民党支持者の基盤であった。しかし、そのもう一代後の孫の世代になると、中国への親近感はめっきり低下する。第二次大戦後台湾に侵攻してきた人々、およびその子孫をを外省人と呼ぶが、彼らの意識も大きく変わっている。彼らの多くは台湾人という意識をもつようになっている。なにせ、中国へ行ったことも、見たこともない人があっとうてきに多い。

 現在、国民党は、中国との経済関係を重視し、中国が政治的には一定の自立を認めると想定しているのではないか。だが、それはかなりご都合主義的な展望ではないかと思える。中国は、基本的には、香港に対するのと同様の方針で台湾に臨むのではないかと思われる。だが、香港の実情を知っている多くの台湾の人々にとって、この方針は受け入れがたいものだろう。

 肝腎の中国政府の態度が問題である。最近の台湾への対応は、露骨な経済的な誘導と、軍事的な圧迫である。これで、台湾の人々が中国への警戒心を高めるばかりである。国民党は、それは国民党の主張の根拠を弱めているのではないか。民進党にも、かなりの失敗があるようだが、国民党のような構造的な危機があるわけではない。

 鄭麗文さんの親日的な態度も、国民党的な基本方針が、じょじょに困難になってきていることの一例なのかもしれない。彼女は、台湾大学の法学部卒業して、英国の大学院の修士を獲得している。そもそも、元々は民進党員で、急進的な台湾独立論者である。父親が外省人で、軍人だったことが、彼女の国民党員としての基盤になったようだが、基本的には伝統的な国民党員とはやや毛色の違った存在である。彼女が党首となったこと自体、国民党の困難を示していると解釈できる。


2026/08/09


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